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マーケティングDXとは?意味や成功のポイント、事例を紹介。デジタルマーケティングとの違いも解説

近年、さまざまな企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが広がるなか、マーケティング分野でもDXを推進する企業が増えています。本記事では、マーケティングDXの概要からデジタルマーケティングとの違い、推進する上での課題、成功のポイントや事例まで、分かりやすく解説します。

マーケティングDXとは?

マーケティングDXとは、広告宣伝や市場調査、新規顧客の開拓、商品開発などのマーケティング業務について、デジタル技術を活用して業務変革を行うことです。

“大手広告代理店の電通は、マーケティングDXについて「生活者を中心に捉え、デジタルを活用した新たな顧客体験の創造を通じた事業・マーケティング活動全般の変革」と定義しています。”

出典:マーケティングDX調査2021(電通)

さまざまなデジタル技術を駆使し、企業が取り組むマーケティングの業務や工程をアップデートします。単純なITツールの利用に留まらず、企業内で業務変革を起こし“市場における競争優位性”を確立することが、マーケティングDXの目的です。

出典:マーケティングDX調査2021 (電通)

マーケティングDXとデジタルマーケティングの違い

マーケティングDXとよく似た言葉に「デジタルマーケティング」があります。デジタルマーケティングとは、デジタル技術を使ったマーケティング手法のことです。WebサイトやSNS、アプリケーションなどのITツールやデータなど、デジタルを活用してマーケティング活動を行います。
デジタルマーケティングが「デジタルを活用したマーケティング手法」であることに対し、マーケティングDXは「デジタルを使って業務を変革すること」を指します。
デジタルマーケティングは、マーケティングのデジタル化を目指しますが、ビジネス変革や業務改革が目的ではありません。一方でマーケティングDXは、ITツールやデータを有効活用して、「根本的なビジネス変革や業務改革につなげること」が目的です。このように、明確な違いあります。

マーケティングDX推進の課題とは

昨今、日本全体でDX推進の機運が高まっており、多くの企業がマーケティングDXに取り組んでいます。2022年4月に電通が発表した「マーケティングDX調査2021」によると、マーケティングDXの取り組みを進めている企業は86.8%に上ります。また、成果が出ている企業も2020年度の49.6%から、2021年度は60.4%へ増加しています。

企業がマーケティングDXを推進するときに、どのような課題があるのでしょうか。取り組みを進める企業を通じて、見えてきた課題は以下の4つです。

人材の不足

マーケティングDXを推進する上で、最も大きな課題が「人材の不足」です。電通デジタルが行った2020年の調査でも、多くの企業が課題のTOPに挙げています。
具体的には「自社内で育成を担える人材が乏しい」「自社で育成するための教育プログラムや教育機会が乏しい」と、多くの企業が自社での育成に課題を抱えています。
マーケティングDXは、業務の一部をデジタル化するだけではありません。ビジネス全体を俯瞰し、デジタル技術を活用して「マーケティングのあり方そのもの」を変革する必要があります。そのためには、企業全体のマーケティング戦略や業務把握が欠かせません。
また、デジタルマーケティングの知識や経験をもとにデータを解析し、社内の複数の部署や関係者の理解を得ながら、大きな構造改革を起こす推進力が必要です。
このような多様なスキルやリーダーシップを持ち、実行できる人材は限られます。人材確保と育成は、どの企業も抱える課題といえるでしょう。

Q.DX推進上の障壁(各年のランキング)

マーケティング業務の複雑化

次に、「マーケティング業務の複雑化」が課題に挙げられます。
近年、世の中のデジタル化が進み、モバイルサービスやSNSの利用が広がりました。企業はさまざまなデータ取得が可能となった一方で、マーケターの業務範囲は拡大し、業務量も増加。マーケティング業務の難易度と業務負担は、高まる一方です。
多様化する消費者の行動様式に対して、時間を掛けて検討が必要な「顧客インサイトの分析」や「戦略策定」に、多くのマーケターは十分な時間を割けていないのが現状です。
このようにマーケティング業務の複雑化が、マーケティングDXの大きな課題となっています。

過去の成功体験への依存

各企業が持つマーケティングノウハウは、「今までの成功体験の蓄積」といえます。その蓄積の大きさから、過去の成功体験から脱却できず、マーケティングDXが進まないケースがあります。
マーケティングDXは業務変革が必要になるため、過去から続く商習慣や広告宣伝活動、顧客とのコミュニケーション方法の見直しや改善が必須です。
改革の取り組み途中で、一時的に顧客離れが起きたり、売上が下がったりするリスクもあります。また、取り組み方を間違えてしまうと、ブランドイメージを毀損することもあるでしょう。
マーケティングDXを推進するには、過去の成功体験を捨てられる強い意志や、関係者が納得する改革案の根拠が必要になります。

固定化した業界構造

マーケティングDX推進課題の一つに、「業界構造が固定化」していることが挙げられます。
マーケティングに関わる業務は、広告主と代理店の関係性や、商品・サービスの流通方法、メーカーと小売店の取引関係を通じ、成り立っています。業界構造は古くから続くもので、今までのやり方やしがらみを変えようとしても、簡単にはいきません。改革を進めるには、固定化した「業界構造」の壁を乗り越え、古い慣習に立ち向かうことが必要です。

マーケティングDXを成功させるためのポイント

ここで、マーケティングDXを成功させるためのポイントを紹介します。

経営トップによるコミットメント

最も重要なのは「経営トップによるコミットメント」です。マーケティングDXはマーケティング部門だけでなく、営業部門をはじめさまざまな部署に影響を及ぼします。
複数の部署を超えて改革を推進し、ときには顧客や取引先とのコミュニケーション方法や、商流を見直す必要があります。これらの業務改革を進めると、現場から反発を受けることもあるでしょう。反発に負けず社員の理解を得るためには、経営者の理解と後押しが必要です。
また、マーケティングDXの取り組みには、ITツールや人材への投資が必要になります。必要な資金を確保し、全社一丸で取り組むには、経営トップから全社員に向けた「マーケティングDXを成功させる」コミットメントが必須です。

ミッションや目的の明確化とKPIの設定

マーケティングDXを成功させるには、「導入目的の明確化」と「数値測定」が重要です。
取り組みを始める前に「なぜ導入するのか」「どの業務をどのように変革させるのか」など、ミッションや目的を明確にし、現場に浸透させます。関係者がミッションを共有することで、同じ目的のもと活動を進めることができます。
目的に対する共通認識がない場合、各部署が自分達の都合が良いように改善を行い、部分的な業務改善で終わってしまうでしょう。
また、目的の共有と併せて「KPIの設定」も大切です。KPIを設定することで、フェーズごとに効果測定が可能になります。効果測定ができることでPDCAサイクルを回せるため、マーケティングDXの推進が加速します。

使いやすいITツールの導入。外部パートナーとの連携

誰でも使いやすいITツールの導入も、マーケティングDX成功に欠かせないポイントです。マーケティングDXのプロジェクトを始めると、ほとんどのケースで「新しいツール」を導入することになります。
これまでITツールを使う機会が少なかった従業員も、ツールの利用頻度が増えるでしょう。そのため、従業員が使い易いツール選定が重要です。
また、必要に応じて「外部パートナーとの連携」を図りましょう。マーケティングDXの推進は、今までにない視点や新しい技術が求められるため、社内人材だけでは対応が難しい場合があります。
スキルを持つ外部パートナーと連携することで、自社だけでは実現できない取り組みも可能になります。また、自社のリソース確保につながり、力を入れるべき領域により注力できます。すべてを自社で完結しようとせず、外部パートナーを有効活用しましょう。

マーケティングDXの成功事例

マーケティングDXで「成果を創出している企業」は「そうでない企業」と比べて、“顧客体験の提供”を重視する傾向が強く見られます。ここで、マーケティングDXに成功した企業の3つの事例を紹介します。

コカ・コーラ:自販機とアプリを連動させたDX施策と顧客体験の実現

マーケティングDXの代表的な成功事例といえるのが、モバイルアプリ「Coke On」を提供する大手飲料メーカーの「コカ・コーラ」です。コカ・コーラは、消費者がアプリを自販機にかざして購入すると「15本購入するごとに1本無料」のサービスを提供しています。
デジタルによって「自販機でスタンプが貯まり無料特典がもらえる」といった、新たな顧客体験を実現。 導入効果として、リピーターが増えて売上アップしたほかに、同社の新しいマーケティング施策につながっています。
コカ・コーラは、アプリで収集したデータをもとに、顧客の好みにあうコンテンツやクーポンを配信。利用ユーザーに適したクーポンを配ることで、効率的に顧客のサンプリングデータを取得でき、併せて顧客満足度の向上を実現しています。

江崎グリコ:MAツールを活用し、B2B事業のマーケティング変革に成功

マーケティングDXで企業変革を行い、獲得したノウハウを企業内で有効活用しているのが、大手食品メーカーの「江崎グリコ」です。
江崎グリコは、法人向けに「名入れノベルティ」を提供するB2B事業で、マーケティングDXに取り組んでいます。同社はMA(マーケティング・オートメーション)ツールを導入し、営業活動のデジタル化を推進。営業活動を、従来の対面スタイルから「オンライン営業」へ移行しました。
オンライン営業の推進に伴い、データ分析やデータ予測を活用した結果、オンラインでのリード獲得数が増加。有力な見込み顧客にアプローチ可能となり、成約率と売上が大きく向上しました。
江崎グリコは、この仕組みを他のB2B事業にも展開。同社が手掛ける「備蓄食・非常食の販売」にも流用したところ、同ビジネスの受注率が大幅に向上しました。MA活用のノウハウを複数の事業で活用し、企業全体のビジネス変革「マーケティングDX」を実現しています。

 JTB:観光アプリでデータ分析。新たにコンサルビジネス参入を目指す

大手旅行会社のJTBは、AIチャットボットを導入し、マーケティングDXに成功した企業です。
同社は、日本マイクロソフトやナビタイムジャパンと「JAPAN Trip Navigatorアプリ」を共同で開発。AI技術で観光客とコミュニケーションを深め、魅力的な日本観光ができる顧客体験を実現しました。
サービス内容は、土地勘のない場所に訪れた観光客が「JAPAN Trip Navigatorアプリ」を使用し、観光情報を問い合わせ。AIがアプリ上で問合せ対応を行い、観光客に適切な観光場所を案内します。
JTBは、本アプリで取得した観光客の行動データを有効活用。観光客の興味度をもとに新しい観光プランを開発し、満足度の高い観光プランとサービスを提供しています。
現在、コロナ禍で訪日観光客は減少していますが、JTBはJAPAN Trip Navigatorで取得したデータやノウハウを活かし、新サービスを検討中です。訪日観光客の嗜好データや行動データを分析し、訪日観光客の誘客に課題を持つ自治体に対して「インバウンドビジネスの支援」に生かしていきたい考えです。

まとめ

マーケティングDXを推進することで、新たなサービスの構築や、O2Oマーケティングの実現、マーケティング活動の自動化が可能になります。
顧客がサービスを認知してから継続購入にいたるまでの、「一連の顧客体験の向上」が実現できれば、マーケティングDXの取り組みは成功したといえるでしょう。
マーケティングDXの本質は業務変革であり、単にITツールを導入するだけでは実現できません。今までの業務や文化を変えるには、経営トップが改革をコミットし、全社一丸となった取り組みが必要です。 顧客体験の向上を目指し、マーケティングDX を成功させましょう。

この記事の著者

LW BLOG編集部

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