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ショールーミングとは?具体的な課題や対策、事例などをご紹介

インターネットの発展やスマートフォンの普及によって、消費者の購買行動は大きく変化していきました。
そしてネットショッピングが一般化したことにより、店舗で商品を見て、ECサイトで購入するショールーミングと呼ばれる購買行動がよく見られるようになりました。
本記事では、ショールーミングの基本的な概要と課題、具体的な対策のポイント、事例などについてお伝えしていきます。

ショールーミングとは

ショールーミングとは、ECサイトで商品を購入する前に実店舗で実際の商品に触れて確認することを指します。
実店舗では確認だけで、購買はECサイト等のオンラインで行う行動のことです。
多くの消費者は、商品のデザインやサイズ感、質感、機能性などが自分のイメージしているものかを確認するために、商品を実際に手に取って確認したいと考えています。
できるだけ安く買いたい場合や、持ち帰るのが大変なものに対して、ショールーミングする傾向にあります。
また、ショールーミングは消費者にとって合理的な行動といえます。
ECサイトは比較的安価であるものの、実際に商品を手に取らないと分からないことや、不安なことがあります。
そこで、ショールーミングによってお金を払わずに購入前に不明点や不安点を解消することができます。
ショールーミングは、デザイン性が大切なアパレル業界や機能性が分かりにくく高価格帯の電化製品などで行われやすい傾向にあります。
元々、店舗で商品を確認してECサイトでの購買を計画している方もいれば、実店舗で購買する予定であったが、チャネルスイッチしてECサイトで購買する方もいます。

ショールーミングする消費者が増えてきた背景

このようなスタイルが一般的になった背景には、スマートフォン(以下、スマホ)の普及が関係しています。
スマホの普及により、ショッピングサイトやオークションサイト、価格比較サイトなど、商品をより安く購入するための環境が整いました。
しかし商品の実際のサイズ感や手触りといった特徴を理解することは難しく、「購入してみたらイメージと違っていた」といった経験のある消費者も多く、実際に商品を手に取って確かめたいというニーズが存在しています。
そのため、オンラインで情報を得てから店舗に足を運んで実物を確認し、そこで購入するかどうかを決めたり、ほかの商品と比較したりできるショールーミングが重要な役割を担うようになったのです。
また、スマホのカメラで商品のバーコードを読み込むと、自社ECサイトやアプリ上の商品詳細ページに自動的にアクセスしてくれるアプリが次々に登場しています。

ウェブルーミングとは?ショールーミングとの違い

ショールーミングと反対の消費者行動として挙げられるのが「ウェブルーミング」です。
ウェブルーミングはWEB上で商品に関する情報収集を行い、購入は実店舗で済ませる行動のことです。
ウェブルーミングを行う背景には、ECサイトを利用する際に送料がかかってしまうことや、配送までに時間がかかってしまうこと、実際に商品に見て触れて購入したいといった理由があると考えられています。
ウェブルーミングもショールーミングも、「実店舗で商品を実際に見たり触ったりする機会がある」という点は両者に共通しています。
ショールーミングもウェブルーミングも消費者と一度は実店舗で接することになるので、オフラインとオンラインを含めた総合的なオムニチャネル施策の実行が必要となります。

トランスコスモス(株)が2019年3月15日発表した「アジア10都市オンラインショッピング利用調査2019」によると、東京都の「ショールーミング」の経験割合は約62%、 「ウェブルーミング」の経験割合は54%となっています。


参照:トランスコスモス/アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2019」結果を発表

ショールーミングストアとは

ショールーミングストアとは、実際に商品に触れ、確認する体験の場として定め、商品販売を行わない店舗のことです。

参照:大丸オフィシャル

企業側から見るショールーミングストアのメリット

顧客満足度の向上

ショールーミングストアは、消費者の購入を前提としていない店舗なので、押し売りや在庫管理や商品の陳列、会計処理といった業務も必要ないため、スタッフは1人の顧客に対して余裕を持った接客が可能となります。
消費者は、商品をオンライン上で購入するため、店舗で購入した時のように商品を持ち帰る必要もありません。
また、消費者はオンライン上で購入する際、商品のデザインやサイズ感、質感、機能性を直接確認したいというニーズがあります。
価格が比較的高いブランドでは、よりその傾向にあります。
そういった顧客の不安要素を解消する目的としても、ショールーミングストアが効果を発揮します。
実店舗にて品質やサイズ等を実際に確認してもらい、商品やブランドへの信頼度向上を図ることで、今後オンライン上で商品を購入してもらえる可能性が高くなり、リピート顧客の獲得や顧客のロイヤリティを高めることが期待できます。
また、押し売り必要もないため、従業員のロイヤリティも高めることができます。
ショールーミングストアはテストマーケティングの場としても活用できるため、顧客の声を直接収集し、今後の商品開発や実店舗の開設の判断材料として活用することができます。

在庫の削減/店舗スタッフの省人化

店舗で商品を販売しないので、必要最低限の在庫のみで、商品をリアル店舗へ置いておく必要がありません。
そのため、発注・仕入れ・検品・在庫管理などの人件費やコストを大幅に削減できます。
在庫を保管するための場所を大幅に削減できるので、店舗の規模も縮小できます。
過剰な在庫負担の抑制は、店舗を運営する上で、大きなメリットと言えます。
また、店舗で商品を販売する際は、在庫管理やレジや梱包などの会計処理などさまざまな業務が発生します。
しかし、ショールーミングであれば、接客以外の業務を担う人員数を減らすことができます。
通常の店舗で発生する業務の一部が省略され、少ない人数でも店舗運営できるようになるため、人件費の削減が見込めます。

ショールーミングストアの課題

通常の店舗でも自社アプリでバーコード・QR読み取り機能からECサイトに飛べる仕組みは作ることができますし、ECサイトで購入し店舗で受け取るBOPISを導入している店舗も増えた中、企業側のメリットはあるものの消費者側から見たショールーミングストアのメリットを提供するのは、容易ではありません。
また、試着品のピッキングや試着室へのセッティング、試着後の検品と棚戻しという人的な運用も少なからず必要となります。
ショールーミングストアによる売り上げが伸びずに、通常店舗に販売効率も収益性も及ばなかったゆえにショールーミングストアが定着しなかった企業も多数あります。

ショールーミング型ポップアップストアとは

ポップアップストアとは、数日から数週間程度の短期間限定で出店されるショップのことです。
一通りの多い路面店の空きスペースやショップやデパートの一部を利用して、商品やブランドの認知拡大や新商品プロモーション、テストマーケティングなどといった目的で出店されることが多い傾向にあります。
ポップアップストアで実際に商品を試してみた結果、ブランドのファンになるということも考えられます。
オフラインで店舗を構えていないD2Cブランドにとって、ポップアップストアは顧客とリアルで接することができる貴重なチャネルです。
うまく活用できれば、ブランドの認知拡大にもつながり、サイトへの流入や今後の売上にもつながります。

企業側から見るショールーミングの課題

他社ECサイトで購入される

消費者からすれば、同じ商品であれば、少しでもお得に買い物を済ませたいのが本音です。
商材にもよりますが、ECサイトのほうが安く購入できるケースがあります。
そのため、消費者は実店舗よりも安く購入できるECサイトで購入することがあります。
スマホのカメラで商品のバーコードを読み込むと、ショッピングサイトに自動的にアクセスし、価格や在庫を表示するアプリが次々に登場しています。
これは自社のECサイトにアクセスするのではなく、大手モールなどへアクセスするアプリです。
その場で価格を比較できてしまうので、販売側としては頭が痛い問題です。
ECサイトを運営している企業にとって問題なのが、実店舗で商品を見て他社のECサイトで購入されることです。
ECサイトや大手モール、オークションサイト、価格比較サイトなど、商品をより安く購入するための環境が整ったことやスマートフォンの普及が関係しています。
ショールーミングストアは商品を見て確かめるだけのショールームと化し、店が客でにぎわっているにもかかわらず、商品は売れないという現象が発生し、実際、アメリカの家電量販店が深刻な販売不振に追い込まれた例もあります。
店舗だけでなくECサイトや自社アプリも持っている企業ならまだしも、ECサイトや自社アプリがない企業にとっては致命的な問題となっています。
ショールーミングする方の他社ECサイトへの流入を防ぐか、いかに自社のECサイトで購入してもらうかが、企業側の重要な課題です。
例えば、ショールーミングストアでタブレット端末を設置し、設置したタブレット端末から、もしくは消費者自身のスマホの企業のアプリから商品のバーコード・QRを読み取り、自社ECサイトにアクセスできるようにすることで他社ECサイトに行かないような工夫が必要です。
自社ECサイト上では、口コミやレビュー、細かな商品説明を確認できるようにする必要があります。

CXの向上

消費者の購買を左右するのは価格だけではありません。
消費者は「モノ消費」から「コト消費」へ変化していきました。
消費者を満足させるショッピングの楽しさ、便利さ、お得感、体験をどう演出していくか、リアル店舗とECサイトなどのオンラインをうまく融合していくことが取り組むべき課題といえます。
顧客の体験を設計する際には、顧客のカスタマージャーニーマップ上でオフラインの実店舗やオンラインのECサイトが顧客にとってどうあるべきか定義する必要があります。

ショールーミングは、単にオンラインへの購入を促すだけではなく、顧客のニーズを汲み取った実店舗でしか体験できない経験を顧客に提供することが求められます。
ショールミーミングストアでも販売する店舗でも、顧客が最も望む接客をどのように行うか、そのコミュニケーション設計が重要なポイントになります。
顧客とのリアルな距離感をぐっと引き寄せ、実店舗ならではの体験価値やコミュニケーションを生み出すことで、顧客のエンゲージメントにつながります。

消費者のショールーミングへの対策

消費者のショールミングが一般化していく中で、企業側はどのような対策を取るべきなのかについてお伝えしていきます。

自社ECサイトで購入してもらえる環境を作る

「企業側から見るショールーミングの課題」の項目でお伝えした通り、企業側からすると自社の店舗で商品を見ているのに、他社のECサイトや大手モールで購入されてしまってはせっかく来店していただいのになんの意味もありません。
来店していただいた消費者がオンラインで購入する際に、自社ECサイトで購入してもらえる環境を作ることが大切です。
店舗内で気に入った商品を見つけても、類似商品と比較・検討をするために購入を保留するケースや他社ECサイトで購入するケースもあるため、店舗スタッフが消費者の情報検索をサポートし、その場での購入や自社ECサイトで購入してもらうことをサポートする必要があります。
例えば、店舗で気になる商品を見つけた時に、自社ECサイトの商品の詳細情報や口コミ・レビューなどにアクセスできるように自社アプリ内にバーコード読み取り機能を設け、Wi-Fiを提供するなど、接客による情報提供に加え、来店客自身が店舗内で情報検索できるような環境を整えることで、店舗内での購入や自社ECサイト内での購入を後押しします。

※バーコードリーダー機能の導入には、企業側で商品紹介ページをJANコードで管理する必要があります。

こうした機能は、消費者側からしても、商品名で検索する手間が省けるメリットがあります。
現在の主流は、自社アプリ内でバーコードを読み込みJANコードを取得し、自社ECサイトの商品詳細に飛ばすことが多いかと思います。
自社アプリがない場合、商品ごとにQRコードを掲載する方法やECサイトにもバーコード読み込み機能を設けるという2つのパターンが考えられます。
しかしECサイトにバーコード読み込み機能があっても消費者の利便性が良くないので、実際このような形を採用している企業は見かけません。
QRコードを読み込む方法の方が現実的でしょう。
例えば、ShopifyでECサイトを運営している場合は、Shopifyのアプリ「Shopcodes」を使うことで、QRコードが生成可能できます。
このQRコードアプリはカートに入れた状態のURLが作成可能となっており、QRコード読み込むとカートに入れた状態のECサイトに飛ばすことができます。

参照:Shopify 

また、ショールーミングで店舗に足を運んでもらえる機会を利用して、アプリや企業のWebサイトなどの登録を促すといった施策を考えることも1つの案としてあるかと思います。

オムニチャネル/OMOを展開する

消費者のショールーミングを受け入れた、オンラインとオフラインを連携または融合させた戦略を展開します。
あらゆるチャネルを統合・連携させてどんな販売経路からでも等しくスムーズに商品の購入ができる状態を目指すオムニチャネルやオンラインとオフラインの垣根を越えて顧客体験の向上を目指すOMOなどの導入が挙げられます。
ショールーミングに対する対策の基本的な考え方としては、顧客目線に立つことです。
消費者のショールーミングはオムニチャネルの一側面に過ぎません。
顧客目線を重視したオムニチャネル戦略を展開することで、消費者のショールーミング行動にも対応できます。
例えば、ECサイトやアプリなどのオンライン上で購入した商品を実店舗で受け取れるようにする、支払いは店舗で行い、受け取りを自宅に指定する、ECサイトで貯めたポイントを実店舗で使えるようにすることなどが挙げられます。
このように、実店舗とオンラインの連携を強めて、顧客の利便性を高めていくことが大切です。

ショールーミングストアの設置

こちらについては「ショールーミングストアとは」でお伝えしておりますので、そちらをご確認ください。
必ずしもショールーミングストアが必要なわけではないです。
扱っている商材、ターゲット、自社の状況など、さまざまな条件により、ショールーミングストアを設置するか検討する必要があります。

ショールーミング対策の国内事例紹介

ZARA

参照:流通ニュース

ファッションブランドの「ZARA」は、早い段階からショールーミングの対策を行ってきたことで知られています。
2018年には六本木に期間限定の巨大なショールーミングストアをオープンしたことで話題になりました。
試着や接客が受けられる実店舗の良さと、ECサイトの利便性を融合した体験型OMO店舗として展開しました。
この店舗では直接商品の販売は行わず、気になる商品を見つけたら、ZARAアプリでバーコードをスキャンするとECサイトに繋がり、そこから購入できるようになっています。
また、支払いに関してはECサイト上だけでなく、レジでの支払いにも対応しており、受け取りに関しても自宅配送か他店を含む店舗受け取りを選択できるようになっています。
ショールーミングストアでの受け取りを希望する場合、午後1時までの注文で当日午後6時以降に受け取り可能で、午後1時以降の注文分は翌日午後6時以降の受け取りとなっている。
消費者のニーズに応え、顧客の利便性を追求した仕組みとなっています。
その他にも、アプリを使用することで試着室の予約ができ、準備ができたタイミングでプッシュ通知が届くため、試着までの時間を自由に使えるようになっています。
アプリのダウンロードに抵抗のある消費者は店頭スタッフが持ち歩くデバイスなどを利用して同様に試着予約できます。
試着の待ち時間がなく、商品を持ち帰らずに済むので、特に赤ちゃんを連れた母親や地方からの来店客からは高い評価となりました。

GU

2018年11月に、GUが「原宿ではじまる、あたらしいファッション体験。モバイルとデジタルサイネージで自由自在にスタイルを楽しめる。あなただけのスタイルを見つけよう!」をテーマにしたショールーミングストア「GU STYLE STUDIO」をオープンしました。
店内に設置されたデジタルサイネージ「GU STYLE CREATOR STAND」で、その場で撮影した顔写真をもとに自身のオリジナルアバターを作成し、サイネージに登録されているGUのアイテムを選択することで自由にバーチャル試着・コーディネートを楽しめます。

参照:PR TIMES

ほしいと思った商品は、デジタルサイネージから公式アプリ「GU STYLE CREATOR」に連携でき、そのままオンラインストアで購入でき、お客様のご希望に沿った時間や場所でお受け取りいただけます。
公式アプリに連携することで退店後もアプリ上でアバターの着せ替えを楽しむことが可能です。
マネキンに付属するQRタグの読み込みや、商品を持った試着室への入室により、自動的に自身のアプリ上で当該のアイテムがお気に入り登録される仕組みもあります。
デジタル体験の楽しさとECサイトの連動により、「次世代型OMO店舗」であることが特徴です。

ヨドバシカメラ

大手家電量販店の「ヨドバシカメラ」は、ショールーミングの流れを積極的に販売経路に取り入れています。
店頭に並べられた商品には、専用のアプリで読み込めるバーコードがついており、読み取ることでヨドバシカメラのECサイトの商品ページに繋がる仕組みとなっています。
商品ページでは、商品のレビューや売上ランキング、メーカーの別商品や競合メーカーの商品もすぐ調べられます。
この仕組みにより、他社のECサイトに流れるのを防いでいます。
ポイントについても実店舗とECサイトが統合されており、店頭とECサイトで価格は変わらず、消費者からすると、店舗でもECサイトでも買いやすいように設計されています。
また、店内では登録不要の無料Wi-Fiが利用できるうえ、消費者がスマホを持ちながら商品を探すことを推奨している点も特徴的です。

まとめ

今回は「ショールーミングの具体的な課題や対策、事例などをご紹介」についてお伝えしました。
顧客満足度や顧客ロイヤリティを高めるには、CXの向上が必要ですが、CX(顧客体験)を向上させるには、顧客視点で顧客中心の体験を創造しなければいけません。
顧客視点を持つには、顧客の購買行動を知る必要があり、その購買行動を考慮したサービスを設計しなければいけません。
本記事がショールーミング対策のヒントになればと思います。
では、今回はこの辺で。

この記事の著者

イノウエ リョウヘイ

プランナー/ディレクター/マーケター

ECサイト、ブランドサイト、コーポレート、採用サイト、オウンドメディアなどのウェブサイト制作やプランニング、マーケティングについて、私のナレッジを発信しています。

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