ここ近年、ECサイトで購入した商品の受け取り方法が、自宅受け取りだけでなく店舗や専用ロッカー、宅配ボックスで受け取るなど、多様化してきています。
今回はさまざまな受け取り方法の中からECサイトで注文し、店舗で受け取るBOPIS(ボピス)についてお伝えしていきます。
BOPIS(ボピス)は、新型コロナウイルスの影響で需要が増加し、国内でも徐々に普及しつつあります。
顧客体験(CX)価値を高めるために、重要な取り組むべき課題として、小売業界を中心に注目を集めています。
本記事では、そんなBOPISについてのメリットや導入方法、事例など、BOPISにまつわるさまざまな情報をお伝えしていきます。
BOPISは「Buy Online Pick-up In Store」の頭文字を取ったもので「ボピス」と読みます。
ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ることができる仕組みのことで、店舗受け取りサービスが可能になります。
BOPISにより、消費者にはさまざまなメリットがあります。
送料の負担がない、レジに並ぶ必要がない、店舗内を歩き回らなくて良い、実店舗で商品のサイズや素材感など直接確認が可能、その場で返品できるなど、さまざまなメリットがあります。
BOPISは欧米や中国の大手小売業などを中心に普及し、日本国内でも徐々に浸透しつつあります。
なお、BOPISは後述するクリック&コレクト(Click&Collect)の1種です。
近年は国内でも透しつつあるBOPIS。その普及の要因の一つが、新型コロナウイルスの感染拡大です。
コロナ禍の影響で人との接触を回避する動きが高まり、可能な限り人と接触せずに買い物時間の短縮できる決済までの過程をオンラインで済ませられるBOPISという買い物のスタイルの需要が高まりました。
コロナ前の2018年と比較すると、BOPISの注文はかなりの伸びを見せ、2020年の段階ですでに米国の小売注文全体の約40%を占めています。
クリック&コレクトとは、ECサイトで商品を購入し、実店舗や街中の専用ロッカー、ドライブスルー、コンビニなど、受取り指定した自宅以外の場所で消費者自身が商品を受け取るようにする仕組み・サービスのことをいいます。
基本的にはお客さまに配送料がかかるケースが多いです。
海外では普及しているクリック&コレクトですが、日本ではまだまだBOPISほど浸透はしてない印象です。
中国ではクリック&コレクトが一般的な文化となっており、中国国内シェア第2位のECプラットフォームJD.comでは、注文した商品を学校、図書館、役所、公民館などの場所でも受け取ることができます。
顧客のニーズに応える形で技術やサービスが発展し、行政機関や地方自治体など、国と提携して、社会のインフラとしても成り立っています。
BOPISはECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ることができる仕組みで、クリック&コレクトはECサイトで購入した商品を自宅以外の場所で受け取ることができる仕組みになります。
自宅以外の場所なので実店舗も含まれますが、専用ロッカーや宅配ボックス、コンビニ受け取りなどの場合はクリック&コレクトに当てはまることになります。
BOPISと違って受け取り場所が店頭に限定されていないため、消費者は選択肢が増えることでメリットが大きくなります。
宅配業者国内シェアトップのヤマト運輸を活用する場合、ヤマト運輸との契約が必要です。
契約後、『EC自宅外受け取りAPI』があるので、そちらを自社ECサイトに組み込む(自社サイトの開発)が必要になります。
APIを組み込むと、ECサイトで購入した商品を受け取る際、コンビニや宅配便ロッカー(PUDOステーション)など、全国約25,000以上(2019年3月時点)の拠点から自宅以外の受け取り場所がECサイトの購入画面で選択できるようになります。
詳しくは下記を参照ください。
EC自宅外受け取りAPI | ヤマト運輸
BOPISであれば、店舗内を歩き回って商品を探したり、レジに並ぶ必要がなく、商品を受け取ることができます。
店舗で商品を探すよりもECサイトの方が豊富な商品数や商品の詳細が確認でき、店舗での買い物時間の短縮ができます。
ECサイトで商品を確認し、実際に店舗で購入しようと来店した際に、「購入しようとした商品が店舗になかった」を防ぐことができます。
また、ECサイトで気になる商品が残りわずかの時に、取り置きすることもできます。
在庫が切れている場合は、取り寄せし、入荷したタイミングで取り置きをしておくこともできます。
従来のネットショッピングでは、商品を受け取るために自宅で配達を待たなければなりません。
一方BOPISの場合、ECサイトで購入し、もし実店舗に在庫があれば、その日の内に受け取りに行くこともできます。
勤務先の帰りに店舗に寄って受け取ることもできますし、店舗の近くに用事がある際に受け取ることもできます。
消費者が直接店舗に出向いて受け取るので、送料はかかりません。
1回の購入金額が少ない場合でも、送料を気にせずに購入できます。
店舗受け取りの際に、商品のサイズや素材感をその場で確認できるので、イメージと違った場合や商品が気に入らなかった場合など、その場で手軽に返品ができます。
返品にかかる送料なども必要ありません。
まだBOPISの仕組みを入れていないECサイトとの差別化になり、他社と同じ商品を扱っていても、「BOPISに対応可能な店舗」という理由で、顧客から選ばれやすくなり、店舗で受け取りたいお客様を取り込むことができます。
お客様の自宅に届けるとなると、商品一つ一つを各住所に送るために作業が発生します。
店舗受け取りの場合、実店舗に在庫があれば、わざわざ工場や倉庫から商品を送る必要がないため、物流コストが削減されます。
もし在庫が店舗にない場合も倉庫から商品を送る先の住所が各店舗になるため、物流の工数が削減されます。
BOPISは、顧客が商品を実店舗で受け取ることになるため、そこでお客様とのコミュニケーション機会が生まれます。
今までECサイトのみで購入していた顧客の来店させるきっかけづくりとしても効果が期待できます。
接客を通じて顧客との繋がりを深めたり、おすすめの商品を知らせるなど、直接的なコミュニケーションを取るための場として活用できます。
お客様が商品を受け取りに店舗へ来たついでに、他の商品も見て購入してもらえる機会が考えられます。
消費者側のメリットでお伝えした、消費者のメリットを叶えることで、顧客満足度が高まります。
BOPIS(ボピス)は、顧客がECサイトで注文し、店舗で商品を受取るという流れなので、当たり前のことですが、ECサイトと実店舗、2つのチャネルがあることが大前提です。
ECサイトでの注文情報を処理し、実店舗に商品を届ける新たなルールや仕組みの構築が必要となります。
ECサイト上で注文の際に、「店舗受け取り」を選択できるように仕様変更が必要です。
ECサイトが構築できるプラットフォームのShopifyやfutureshopでは、「店舗受け取り」に対応しています。
決済手段は、顧客の利便性を高める上で、複数の支払い方法を用意しておく必要があります。
注文時にECサイト上で支払うを済ませておくのか、店頭で受取時に支払うのか、この2つは選択できるようにしておきましょう。
ECサイトのプラットフォームによってECサイトで購入した際に店頭で受取時に支払う方法を実現できない可能性もあります。
Shopifyでは、Shopify POSを導入していない場合、店頭支払いは設定できないですが、代引決済を利用するなど工夫をすることで店頭支払いに対応することはできそうです。
futureshopであれば、「店舗受取オプション」によりBOPISに対応しているため、店頭支払いにも対応しています。機能追加開発が必要なく導入できます。
自社がどのようにECサイトを構築していて、店頭での決済手段に対応できるか調査する必要があります。店頭支払いに対応しているECプラットファームは少ない印象です。
企業側は、商品一つ一つが今どこでどのようなステータスなのか、リアルタイムな在庫情報を把握できる管理体制が必要です。
在庫管理システムを導入し、店舗ごとに管理していた在庫情報を一元管理しましょう。
このことで、取り置きすることが可能な在庫数を把握することができ、必要な商品を必要なタイミングで店舗に振り分けることが可能になります。
在庫管理システムは商品を倉庫からスムーズにピッキングする仕組みが整っているので、効率的に運用することができます。
店舗在庫をPOS経由でしか把握できず、EC在庫との連携(在庫一元管理)がされていない場合、店舗の在庫をECサイトに表示できず、EC倉庫に在庫されている商品を常に引き当ててしまいます。
このように店舗の在庫データとは別にEC用の在庫データを持っている企業は少なくありません。
こちらのケースはBOPISではなく、BOSSになります。
BOPISとBOSSの違いは、店頭受け取りで注文を受けた商品をどこから調達するのかの違いです。
BOPISの場合は店員が店頭の在庫から商品を確保するのに対し、BOSSではEC倉庫から商品を調達します。
BOPISを導入するのであれば、店舗在庫とEC在庫が一元管理されていて、ECサイトからの店舗受け取り注文に対して、最適な在庫引き当てを行うという仕組みを作らなければいけません。
特に店舗在庫から引き当てができるかどうかが重要です。
ECサイトからの店頭受け取り注文を店舗の在庫でカバーできれば、30分ほどで受け取りが可能になり、顧客の利便性は高まります。
例えば、会社帰りに近くの店舗に立ち寄って、受け取りして帰ろうという顧客のニーズにも対応できます。
店舗に在庫がなければ、近隣店舗やEC倉庫から調達するなどして対応します。
ECサイトから注文を受けた商品の在庫が店頭で大量に余っているのに、EC倉庫から毎度調達してしまうと顧客としては商品到着までのリードタイム長くなりますし、企業としても店舗の在庫も大量に残ったままなので、非効率です。
また、ECの在庫はないが店頭に在庫がある場合に、ECサイトから購入し店頭から出荷できれば、販売ロスを防ぐことにも繋がります。
店舗在庫とEC在庫の両者を組み合わせて、在庫をどこから引き当てるかの仕組みづくりや在庫情報の一元管理や注文管理、ロジスティクスの整備などの調整が必要です。
ロケーション管理とは、倉庫内にある商品の保管場所(ロケーション)を管理する手法で、注文から出荷までの流れをスムーズに行うために欠かせない手法です。
注文受付から最短で商品をピッキングして実店舗に配送するリードタイムをどれだけ短くできるかの仕組み作りは、BOPISを滞りなく運用していく上で重要な要素です。
店舗受け取りを希望した商品が数日後にしか受け取れない場合、お客様は他社の商品を選択する可能性が高まります。
また、商品受け取り可能日時を注文のタイミングで確定できず、店舗に配送したタイミングでメールなどで受け取り可能日時の連絡が来るケースが多いですが、できるだけ注文確定のタイミングで受け取り可能日時を通知できることが理想です。
BOPISは自宅への配送ではなく店舗へ配送するので、自宅に商品を届けるネット通販とは別の店舗への配送ルートを設定し、スムーズに出荷するための無駄のないロケーション管理、仕組みづくりが必要です。
商品を店舗に送る際、どこからどのタイミングで配送すれば、物流コストが削減できるかという観点が求められます。
在庫管理システムを活用や膨大な注文情報を処理する手法として、ビッグデータやAIの活用も視野に入れる必要があります。
商品の取り違えが頻発したり、商品の取り置きに時間を要して品切れが発生したり、店舗への商品の到着が遅ければ、クレームや顧客がBOPISを利用するメリットが薄れてしまいます。
ロケーション管理によって倉庫内の商品を効率良く配送ルートに流せる仕組みを整えることで、顧客満足度を高めることに繋がります。
BOPISを実施するには、BOPIS担当者や店舗スタッフへの教育・研修を実施し、BOPISに対する理解や対応ができるようにする必要があります。
BOPIS担当者は、在庫やロケーション管理、店舗スタッフからの問い合わせ対応やBOPISの質の向上や分析なども行なえるよう、必要に応じて社内でもBOPIS担当者を選任・教育する必要があります。
店舗には、これまでと異なる在庫管理や売り方、顧客への対応・接客が求められます。
BOPISは、ECサイトと実店舗、その双方がシームレスに動ける環境の整備が必要です。
さまざまな企業がBOPISを導入しています。
ここでは、BOPISを導入している企業の事例を紹介します。
スターバックスではオンラインで商品の注文と決済ができるモバイルオーダーを採用し、長い列に並ばなくてもスムーズに商品を受け取れる仕組みを作りサービスの需要が拡大しました。
朝の出勤前に事前にモバイルオーダーし、店舗で並ばずにスムーズに商品を受け取ることができるなど、ターゲットのニーズを意識したサービスにより、顧客満足度を高めることができます
顧客の待ち時間が減っただけでなく、利便性が向上したおかげで売上向上にも繋がっています。
ユニクロでは、ECサイトから注文した商品を店舗で受け取ることが可能です。
受け取りの目安は注文翌日から2~3日程度となっています。
店舗に商品が到着するとメールでお知らせがあり、商品が到着してから14日間は預かってくれるので、好きなタイミングで受け取りに行くことができます。
株式会社ワークマンは全国に展開している作業着の専門店です。
ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取れるのはもちろんのこと、店舗に在庫がない場合はECセンターから取り寄せすることができ、欲しい商品を確実に購入することができます
確実に購入できるというサービスは、顧客満足度を高めることに繋がり今では多くの方がワークマンを利用しています。
無印良品でも、ECサイトから注文した商品を実店舗で受け取ることができる「店舗受け取りサービス」を展開しています。
商品を受け取る際に商品の確認や試着ができるので、返品を希望する場合は、その場で対応してもらえます。
代金の支払いは、注文時にネットストアで支払うか、店頭で受け取る際に支払うこともできます。
ニトリでは、ECサイトで注文時に受け取り店舗を選択し、店舗のサービスカウンターで商品を受け取ることができます(一部店舗を除く)。
店舗に在庫があれば翌日に受け取りができます。一部店舗では当日14時までの注文で、最短当日受け取りもできます。
一度購入した商品を14日以内なら店頭で返品できるBORISも実施しています(消耗品やオーダー家具や加工された商品は対象外)。
BOPISに近いサービスとして店舗在庫検索と店頭試着(取り置き・取り寄せ)があります。
下記はユナイテッドアローズ公式通販の商品詳細ページです。
BOPISはECサイトで購入した商品を店頭で受け取るサービスですが、店舗在庫検索はECサイトの商品詳細画面で、その商品が各店舗に在庫があるかどうかを検索できる機能です。
店舗在庫検索はリアルタイムで各店舗にどれだけ在庫があるのか、もしくはないのかがわかります。
顧客のサービス体験としては、そのまま取り置きや取り寄せ、店舗受け取り購入ができると尚いいと思いますが、そこまで店舗在庫検索と紐付いて提供しているサイトは少ない印象です。
店頭試着(取り置き・取り寄せ)は、近くの店舗で試着をできるサービスです。
その店舗に在庫があれば、そのまま試着できますし、なければ取り寄せして試着ができます
基本的にはお客さまの送料負担はありません。
お客様は店頭で試着やスタッフからの接客を受けられ、気に入ればそのまま購入することもできます。
BOPISと同様で店舗への送客を促進できます。
この2つのサービスは、BOPISを導入するのであれば、比較的一緒に取り組みやすい施策になります。
店舗在庫検索と店頭試着(取り置き・取り寄せ)は、各店舗・ECサイトの在庫を一元管理して、どこにどれだけの在庫があるかリアルタイムな在庫管理を行う必要があります。
ここの部分がBOPISと同じなので、同時に取り組みやすいかと思います。
今回は、「コロナ禍で普及が進む店頭受け取りサービスBOPIS(ボピス)とは?」についてお伝えしました。
コロナ禍や多忙な現代人と親和性の高いBOPISは、消費者目線での「利便性の向上」、企業目線での「他社との差別化」や「顧客ニーズへの対応」などのメリットから、今後もBOPISを利用する消費者と企業は増え続けることが予想されます。
この記事がBOPISを導入していない企業の手助けになればと思います。
また、BOPISはオムニチャネル戦略の一部でもあります。
BOPISの導入を考えているのであれば、オムニチャネル戦略についても検討してみてはいかがでしょうか。
オムニチャネル戦略についてはこちらで解説しています
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近年、ECサイト、アプリ、SNS、実店舗など、顧客との接点となるチャネルを連携させアプローチする「オムニチャネル」というマーケティング戦略が注目されています。 本記事では、「オムニチャネルは聞いたことはあるけど、実施するためにはどうしたらいいの?」という方に向けてオムニチャネルについての説明とメリット、実施するための課題について詳しくご紹介します。
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