アパレル業界は他の市場と比べてもECが活発に利用されており、アパレルのEC市場、EC化率は年々成長し続けています。
特にコロナ禍を経て、大きく売上を上げている企業の多くは、新しいデジタル技術の導入や、オムニチャネルなどに取り組み、CX(顧客体験)向上を目指しています。
アパレルECが活況を見せる中、ECサイトで購入した商品のミスマッチなどによる返品率の高さが問題となっています。
その失敗要因として、利用者は実際に試着できないことでサイズ感や質感、色味がわからないことによるミスマッチにあると言えます。
購入前に実物を確かめられないというEC特有の課題を解決するべく、バーチャル試着(バーチャルフィッティング)サービスやECサイトからの店頭試着(取り置き・取り寄せ)サービスが注⽬されています。
本記事では、アパレルECサイトでの「試着」についてスポットライトをあて、いかにCX(顧客体験)の向上を目指していくのかを伝えていきます。
目次
「お店に行かずに自宅で試着したい」「ECサイトで購入するのはサイズ感やイメージがわからないので不安」。
こうした顧客のニーズを踏まえて、注目されているのがバーチャル試着(バーチャルフィッティング)です。
近年のアパレルECサイト市場の活性化もあり、バーチャル試着のニーズは年々高まっています。
バーチャル試着は、AR技術を活用することで、その場で擬似的に試着体験できるシステムです。
スマートフォンやタブレットなどのデバイスを使って、簡単に服の試着をしているかのような感覚を味わえます。
店舗に行く必要や何度も着脱する必要がなくデータ上でスムーズに試着できます。
また洋服以外にも、眼鏡や靴、帽子、アクセサリーなどの試着ができるシステムも増えています。
実際に店頭に行く必要がなく自宅で気軽に商品を試着できるので、オンラインショッピングが急増したコロナ禍を経て一気に注目を集め、現在では多くの企業が導入しています。
将来的にバーチャル試着が普及することで、試着室のスペースが縮小され、試着に対する人員も削減されることが予想されます。
そのため、店舗自体を小さくすることや人件費の削減に繋がり、店舗運営のコストダウンが実現します。
アパレルECサイトの返品率は平均30%というデータもあり、商品のサイズやイメージが違ったというミスマッチが多いことが課題としてよく挙げられます。
ECサイトではMやLといったサイズ表記をもとに自分にあった商品のサイズを購入することが一般的ですが、ブランドによっては小さめであったり、タイトであることもあります。
バーチャル試着では、実際に着てみないとわからないサイズ感や色味をオンライン上で確認することができるため、「イメージと違った」というミスマッチが減り、返品率を下げることができます。
バーチャル試着であれば、商品のサイズ感やフィット感、色味をリアルに確認できるため、今までECサイトでの購入を避けていたユーザー層の獲得が可能になります。
消費者が商品を購入しやすい仕組みを作ることでECサイトでのCVRの向上、返品率の低下に繋がり、売上向上が実現します。
さらには、実店舗で在庫がない商品でもバーチャル試着することができるので、販売機械の損失を減らすことができます。
バーチャル試着は、試着しないと購入に踏み切れないという消費者の不安を払拭することにも役立っています。
実店舗に足を運ばずに気軽に試着体験を行うことができ、時間も手間もかからず、とても便利であることは間違いありません。
オンライン上で実際の商品のサイズ感や色味を確認することができ、さらにすでに所有しているアイテムを着用すれば、組み合わせを確認することもできます。
オンライン上で簡単に試着できるので、店舗に出向く必要がなく時間が省けます。
24時間自分の好きなタイミング・場所で試着が可能なので、気軽に試着できます。
気になる服が複数ある場合やウェディングドレスなどの試着に時間がかかってしまう服に関しても、着脱の手間も省けるので快適に試着できます。
バーチャル試着を実現するシステムには様々な種類がありますが、以下では代表的な5つのタイプ「アプリタイプ」「アプリレスARタイプ」「バーチャルモデルタイプ」「ボディスーツタイプ」「サイネージタイプ」について紹介します。
アプリタイプは、ユーザーの性別、年齢、身長、体重などの情報を基に自身に近いシルエットを作り出し、気になる商品を自由に試着し、フィット感・サイズ感を知ることができます。
正確な肩幅、二の腕、バスト、ウエスト、ヒップなどを計測し登録すれば、より正確なフィット感・サイズ感を知ることができます。
一度数値を登録すれば、何度でも試着することができ、便利なシステムです。
ECサイトに実装されているバーチャル試着の中では、このアプリタイプが最も多い印象です。
また、サービスによっては、スマホで撮影した自分の全身写真から、腕の長さや肩幅など、身体の各部位を数秒で採寸するものやAI技術のシミュレーションにより、画面にバーチャル試着した様子を映し出すものもあります。
アプリレスARは、ECサイト上に掲載されているQRコードをデバイスで読み取ることでARカメラが起動し、画面上に写った自身の姿に商品のデータを重ねるタイプのバーチャル試着です。
アプリ不要でブラウザから気軽にARを体験することができます。
アプリレスARの代表には、世界最大級のECサイトプラットフォーム「Shopify」のARがあります。Shopifyでは商品の3Dモデルを表示し、スマホを通して現実の世界に商品を出現させることができます。
こちらのサービスは家具や自転車、家電、靴などによく使われています。
バーチャルモデルタイプは、ZOZOの子会社ZOZO テクノロジーズが提供している3D・AIを活用したバーチャル試着システムです。
3Dモデルの顔をディープフェイク技術を応用して自分の顔に入れ替え、自身の顔をネット上に表示させることで、バーチャル試着体験ができるシステムです。
これらの技術を活用することで、商品ページを閲覧する際にユーザーの体型、年齢に近いモデルの着用画像を自動的に表示したり、過去の購買データからユーザーの好みのアイテムやスタイルを推測し、ユーザーに近いバーチャルモデルに着用させたイメージ画像を提案したりすることができます。
将来的にはお客様一人ひとりに最適なモデル、着こなしを提供するパーソナライゼーションの構築、バーチャル上での試着などを目指し、バーチャルモデルを量産することで、よりユーザーに近いバーチャルモデルを生成していくそうです。
ボディスーツタイプは、株式会社ZOZOが提供する「ZOZOスーツ」が代表的です。
伸縮センサーが内蔵されているZOZOスーツを着用すると全身の細かい部分まで採寸され、Bluetoothを利用してスマートフォンに計測されたデータを保存できます。
細かく正確な際数データが判明するので、自分の体にフィットする商品が選びやすくなります。
ZOZOスーツは送料200円のみで利用が可能で、今までには無いバーチャル試着体験とコストの低さから注目を集めているサービスです。
ボディスーツタイプはZOZOが独自開発したものです。
サイネージタイプは電子看板を使用してバーチャル試着が体験できるシステムを指します。
多くの場合は実店舗を構えるブランド向けのバーチャル試着システムとして利用されており、サイネージ(電子看板)の前に立つと、自分の姿に試着イメージが表示されます。
サイネージの前に立つだけで様々な商品、豊富なカラーバリエーションを気軽に試着を楽しむことができます。
バーチャル試着として利用しない際は、鏡として使用できるのでショップのレイアウトを大きく変更する必要がなく利便性の高さもポイントです。
大手アパレルブランドのユニクロでは「UNIQLO MAGIC MIRROR」と呼ばれるサイネージタイプのバーチャル試着システムを導入して話題となりました。
Amazonは、拡張現実(AR)技術を利用して、バーチャル上で靴の試し履きができるサービス「Virtual Try-On for Shoes(バーチャル・トライオン・フォー・シューズ)」を提供しています。
Virtual Try-On for Shoesは靴と一部のTシャツ、メガネで利用可能なサービスです。
スマホのカメラで自分の足元を映し、自分が靴を履いた時のイメージをあらゆる角度からどのように見えるかチェックできます。
バーチャル試着中に靴の色をシームレスに変更することや試着画像を保存して、友だちなどとSNSで共有することも可能です。
現在、ニューバランス、アディダス、リーボック、PUMA、アシックスなどの数千種類の人気ブランドの仮想試着が可能です。
SHOPLISTは、服や小物などを数多く取り扱っているファストファッション通販サイトを運営しています。
世界で初めて「bodygram」と言われるAI技術を活用したサービスをiOSアプリにて導入しています。
「bodygram」は高精度身体採寸テクノロジーのことで、身長や体重、性別、年齢の4つの情報と2枚の全身写真からユーザーのボディラインを自動で検出し、簡単に採寸することができます。
採寸データに基づいてユーザーごとに最適なサイズをレコメンド表示する機能を搭載しています。
気になった商品をバーチャル試着することもできるので、サイズ感やフィット感も細かく確認でき、安心して商品を購入することができます。
月額制でブランド腕時計をレンタルできるサービス「KARITOKE」。
サイトから時計を選択して専用アプリを利用すると原寸大の時計が画面に映し出され、疑似的な試着体験が可能となります。
自宅にいながら腕時計のサイズを確認したり、自身の服とのコーディネートを試したりすることができます。
本記事でお伝えしてきたバーチャル試着は、あくまでユーザーがECサイトで購入する際に「サイズが合わない」「思ってたイメージと違う」というミスマッチを無くし、顧客体験(CX)を向上させるための1つの方法です。
ECサイトで購入しようとしているユーザーの中には、バーチャル試着ではなく、実際に店舗で試着したいユーザーもいます。
そういったユーザーのための施策としては、店舗で試着(取り置き。取り寄せ)やECサイトで購入し店舗で受け取るBOPISなどのサービスが適しています。
店舗で試着(取り置き。取り寄せ)では、ECサイトから気になる商品を見つけた際に、試着したい最寄り店舗を予約し、実店舗で試着できる仕組みを作ります。
店舗に商品が無ければ取り寄せすることができるようにします。
ECサイトで購入し、店舗受け取り(BOPIS)の場合は、店舗で受け取る際に実際に商品を確認して、購入したくない場合はその場で返品できるようにします。
バーチャル試着や店舗で試着(取り置き・取り寄せ)、店舗受け取り(BOPIS)など、さまざまな方法がありますが、どの方法をするにしても目的は顧客体験(CX)を向上させるためです。
さまざまな施策・アプローチを知った上で、自社のサービスを利用しているユーザー層、提供しているサービス内容を考慮して、最適な施策・アプローチを取っていくことが求められます。
店舗で試着(取り置き・取り寄せ)、店舗受け取り(BOPIS)についてはこちらで詳しく解説しています。
コロナ禍で普及が進む店頭受け取りサービスBOPIS(ボピス)とは?
ここ近年、ECサイトで購入した商品の受け取り方法が、自宅受け取りだけでなく店舗や専用ロッカー、宅配ボックスで受け取るなど、多様化してきています。 今回はさまざまな受け取り方法の中からECサイトで注文し、店舗で受け取るBOPIS(ボピス)についてお伝えしていきます。 BOPIS(ボピス)は、新型コロナウイルスの影響で需要が増加し、国内でも徐々に普及しつつあります。
今回はバーチャル試着(バーチャルフィッティング)について、メリットや実現するシステム、導入事例などを解説しました。
バーチャル試着は、自宅にいながらお店のように試着できる次世代の試着となり、「実際の商品とイメージが違った」という状況を解消し、顧客満足度(CX)を高めることが期待できます。
ECサイトに導入をお考えの場合、アプリタイプが比較的導入のハードルが低くオススメです。
ARや通信技術の発達により、今後ますます導入する企業が増え、自宅で試着ができるECサイトは近い将来当たり前のものになるかもしれません。
では今回はこの辺で。
ランウェイではECサイトの構築をお手伝いしています。
https://lanway.jp/ec_service/
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