モバイルデバイスの登場により、顧客の行動や感情、集客の販路は複雑化しています。
マーケティングの施策を打ち出す上で、顧客の購買行動を把握することは重要な項目です。
本記事では、マーケティング成果を出すために欠かせないカスタマージャーニーマップの作り方とカスタマージャーニマップを作る上で知っておくべき重要なポイントについて解説していきます。
カスタマージャーニーマップとは、日本語に訳すと「顧客の旅の地図」を意味します。
顧客の人物像(ペルソナ)を設定し、その行動、思考、感情を可視化し、認知から検討、購入・利用へ至る顧客の旅を時系列で捉えビジュアル化したものです。
顧客の各プロセスごとの行動・思考・感情を理解するのに役立つ概念であるため、マップ全体を見渡すことで各プロセスで生じる課題とその対策や施策など、顧客体験の向上を目的に活用することができます。
顧客理解を深め、適切なマーケティング施策をするためには「カスタマージャーニー」の考え方が欠かせません。
近年のITトレンドでもあるCX、UXの向上、オムニチャネル化を実施する際には、カスタマージャーニーマップが必要不可欠です。そんなCX、UX、オムニチャネルと絡めながらカスタマージャーニーマップ作成のポイント・重要性について解説していきます。
最近のユーザーはオンラインとオフラインを行き来することが多くあります。
ショールーミング(商品を購入する前に実店舗で実際に商品を確かめたうえで、購入はECサイトで済ませること)やウェブルーミング(欲しい商品をウェブ上で確認した後、実店舗で購入すること)、ECでの在庫確認などが当たり前の時代になっており、これをどうカスタマージャーニーに描くかが重要なポイントです。
ショールーミングやウェブルーミングを戦略的に実施するには、カスタマージャーニーマップで顧客体験の認知から購入までの流れを可視化することが必須といえます。
昔と違い、必ずしも実店舗が購入の場というわけではなく、顧客の体験の場となっていることもあります。(ショールーミング)
その場合、実店舗はカスタマージャーニーマップの設計上の一部として顧客の体験向上を考える必要があります。
売り場で押し売りすることは必要なく、顧客のエンゲージメントを高め、顧客の情報を吸い取ることが求められます。
また、実店舗はアジャイル開発ができないですが、ポップアップ店舗を使うことでアジャイル開発のよう戦略を取ることもできます。
ポップアップ店舗で、エリア・立地の検証/レイアウトの検証などを繰り返し行い、収益性や顧客体験価値が高いとなれば常設に切り替えることもできます。
オムニチャネルは企業が提供する各チャネルを跨いだ顧客体験の一貫性が重要となります。
そのためには企業は顧客のカスタマージャーニーを把握し、顧客との各接点、そこでの体験や各チャネルの連携を構築する必要があります。
顧客接点(タッチポイント)には、アナログ(TV・新聞/キャンペーン/イベント/店頭)とデジタル(WEBサイト・動画・ウェブ広告・EC・メール・SNS)があり、カスタマージャーニーマップを設定することで各プロセスごとにどのタッチポイントがあり、どういった訴求・体験を提供するべきかが見えてきます。
スマートフォンの普及により、デジタルマーケティングは、購買チャネルとしてだけではなく、SNSや動画視聴などを通じたコミュニケーションチャネルとしても活用されています。
スマートフォンの普及していない時代の店舗のみで販売する場合、消費者は実店舗で多くの意思決定を行っていました。しかしスマートファンの普及により、情報収集や意思決定が、より前の段階から、また場所・時間問わず行われるようになってきました。
つまり店舗に訪れる前の情報収集段階や検討段階からSNS、口コミを通じて、多くの意思決定や情報のアップデートを行っているということです。
企業としては、いかにこの情報収集段階や検討段階に入り込めるか、そこでの評価をあげられるかが重要になってきます。
口コミなどのシェアなどでいい評価を受けると、検討段階や情報収集段階のユーザーにいい印象を与えられることができます。
こうした口コミやシェアなどを考慮したマーケティングにもカスタマージャーニーマップは力を発揮します。
マーケティングオートメーション(MA)とは「購買フェーズを引き上げるために顧客の状況にあわせて実施される、マーケティング活動全般を自動化する取り組み」です。
カスタマージャーニーマップをそのまま施策として落とし込み、施策の大半を自動実行できるようにするためのマーケティングシナリオ設計として使えます。
マーケティングオートメーションで自動実行する為には、どのフェーズなのか判断できる数値やアクションを設定する必要があります。
例えば、カスタマージャーニーマップとしての各プロセスを数値化し、ある指標の数値が条件を満たした場合、メールを送るなどといった感じです。
【フェーズの判断材料となるデータ】
・クッキー取得/閲覧ページ/広告・メール・スマホアプリなどへの反応/個人情報獲得/位置情報データ/ソーシャルメディア行動(エンゲージメント)データ/自社コミュニティ(エンゲージメント)データ/自社サイト訪問回数・頻度・滞在時間/動画閲覧/流入検索ワード、流入元/特定行動補足/購買データなど
「購買行動モデル」とは、消費者が商品やサービスを認知して、購入に至るのか、
また購入後にどのようにリピーターになるのか、という顧客のプロセス(注意、関心、欲求、記憶など)をモデル化したものです。
商品やサービスを消費者に認知させる手段としてテレビやラジオ、新聞・雑誌が主流だった時代と、SNSを通じた情報収集が一般化している現在では消費者行動に大きな違いがあるように、時代やライフスタイルとともに購買行動モデルも変化しています。
また会社のビジネス、商品・サービスの特性によっても消費者の購買行動は大きく変化するので、必ずしも最新のものを使えばいいわけではありません。
AISCEAS(アイセアス・アイシーズ)の法則は、Attention:認知、Interest:関心、Search:検索、Comparison:比較、Examination:検討、Action:行動購入、Shere:共有という顧客の消費行動を表したモデルです。
購入に至る前にインターネットで情報検索を行い、購入後は、体験や感想をSNSで共有するという行動が特徴です。
インターネット、スマートフォンが普及している中で、情報検索がより身近なものになり、商品の比較やレビュー・口コミを掲載したサイトが増えたことで、「比較」「検討」することが可能になった購買行動モデルです。
ソーシャルメディアの普及に着目して作られたSNSマーケティングの購買行動を表したモデル。
SNSで知った情報に共感することで消費者行動が始まることを提唱した理論です。
SIPSの特徴は、プロセスのゴールが必ずしも購買ではない点です。購買だけではなく消費者のリツイートや「いいね!」、レビューの投稿、フォロー、高評価など、広く捉えて「Participate(参加)」と提唱されているので、企業と消費者の関係構築にも応用できます。
2015年に電通が提唱した、コンテンツマーケティング時代を代表するモデルです。
DECAXの法則は、Discovery:発見、Engage:関係、Check:確認、Action:行動(購入)、eXperience:体験と共有で表されます。
DECAXの特徴は顧客の主体的な行動で構成されている点です。
コンテンツの発見という顧客の主体的な行動が起点となり、気に入った商品・サービス、あるいは体験が主体的にシェアとしてつながっています。ユーザーが能動的にコンテンツに触れるので、ユーザーの質が高い傾向にあります。
AISCEASモデルにあった売り手が発信する認知から発見に変わっているのが特徴です。
広告などではなく、為になるコンテンツを発信し、ユーザーが能動的に発見するコンテンツマーケティング(有益な情報を発信して消費者とコミュニケーションを図る)時代を代表する購買行動モデルです。
SNSやコミュニケーションアプリに対応した購買行動モデル。
広告だけではアプローチできなくなった消費者へSNSなどを通じて、消費者同士の共有・拡散により、新たな消費者の興味関心を増やすことで、興味関心を通じて購買行動に結びつけることにあります。
Dual AISASの最大の特徴は、「広めたいのA+ISAS(コミュニケーション関心層)」と「買いたいのAISAS(購買関心層)」を分離して考えていることです。
従来のモデルでは、消費者の興味関心(Interest)は、購買に関する興味関心だけだと考えられていました。
しかし実際は、消費者の興味関心は「コミュニケーションへの興味関心」と、「購買への興味関心」に分けられます。
消費者を「コミュニケーションへの関心層」と「購買への関心層」に分けて考えることで、消費者の購買行動を従来のモデルより正確に把握できるようになります。
「コミュニケーションへの関心層」をいかに「購買への関心層」へと転換させるかが重要な項目になります。
カスタマージャーニーマップを作る際には、まずペルソナ設定が必要になります。
ターゲット・ペルソナ設定についてはこちらで解説しています
ブランドを成功に導くペルソナ設定
新たな製品やサービスの開発、ブランドを再構築する際に、サービスを提供する企業側は、顧客を深く理解し、顧客のニーズを捉えたサービス体験を考えなくてはなりません。 その顧客のニーズを捉えるには、ペルソナ設定が必要不可欠です。 ペルソナ設定により、顧客への深い理解ができ、明確な根拠に基づくブランド戦略を立てることができます。
業種や商品によって購入までのフェーズも大きく違うので、業種や商品・ペルソナの行動に合わせたカスタマージャーニーマップの購買行動モデルを選択する。
購買行動モデルについては、カスタマージャーニーの購買行動モデルについてをご覧ください。
不動産や自動車などの高級な買い物なら「比較・検討」のフェーズが長く、「比較(検索)」「内覧・試乗」「商談」に分解もできるなど、必ずしも購買モデルに完璧に合わせる必要はなく、あくまで目安として使います。
お菓子などの購入なら検討のフェーズがいらない、もしくは短いなど、業種・商品・ペルソナの行動に合わせたフェーズの項目・期間を設定します。
次のフェーズでチームでカスタマージャーニーマップを作成していくので、議論する際にベースがあったほうがスムーズに進むので、簡易的にカスタマージャーニーマップのベースを作成します。
この簡易的に作成するカスタマージャーニーマップはオンラインで同時に複数人で書き込めるツールを選択するとリアルタイムで各々書き込めるので、便利です。
私はMIROを使うことが多いです。
https://miro.com/ja/
それぞれのサービスに合わせてカスタマイズしてください。
【縦軸の例】
●行動
ペルソナはどんな行動をするのか
●感情・心理
なぜその行動をしているのかインサイト。
●チャネル
チャネルは何か
●タッチポイント
タッチポイントは何か
●ユーザーが思い留まる障害や課題
ユーザーはなぜ次のステップに進まないのか(インサイト)
●理想のUX(障害を払拭する)
このフェーズのユーザーにはどんなUXを提供することがベストか。
●施策プラン(理想のUXを達成するための施策)
【横軸の例】
選択した購買行動モデルのフェーズを参考にカスタマイズします。
購入頻度や意思決定の時間によってタイムラインの長さを調整します。
商品・サービスによって、フェーズが1日なのか1ヶ月なのか1年なのか大きく違います。
似た行動項目はグルーピングします。
書き出した行動を通じて、ペルソナの中に生まれる感情や意識、感情、商品・サービスとの接点(コンタクトポイント)、ユーザーが思いとどまる障害・課題(インサイト)を書き出します。
●ペルソナのMOT(真実の瞬間)を見つける。
MOT(Moment Of Truth)とは、顧客が商品やサービスに触れ、印象を形成したり変更したりする“真実の瞬間”のことです。
MOTには色々なMOTがあります。
実は様々なペルソナを作ってもMOTはそんなに大きく変わらないことが多いと言われています。
ZMoT(ズィーモット)/顧客が店に来る前に何か買おうか決める瞬間(口コミ・レビュー・SNSなど)
FMoT(エフモット)/顧客が店頭でどの商品を買うかを決定する瞬間。
SMoT(エスモット)/顧客が商品を購入した後、商品を実際に使用していいか悪いか判断し、継続購入するか決める瞬間。
MoT(真実の瞬間)がわかるとそれに対する具体的な施策を考えることができます。
●顧客に直接かかわる部分だけではなく、裏側の仕組みまで考える。
顧客に直接かかわる部分以外とは、例えば、顧客管理一元化の導入や商品・在庫管理一元化などの裏側、社内環境の構築などのことです。裏側の仕組みが整っていないと顧客体験の向上などが実現しないことも多々あります。
●施策を考える際にはフェーズを意識する
フェーズごとに、どんな施策を提供すれば次のフェーズに行くのか考える。
また、施策は大きく3つに分けることができます。
デジタル手法/リアル手法/マスメディア手法があり、マスメディアは序盤のフェーズと相性がよく、リアル手法は購入に近いフェーズに相性がいいです。デジタル手法は全てのフェーズに登場します。
・デジタル手法:ウェブ広告/デジタルサイネージ/コンテンツマーケティング/SNSなど
・リアル手法:カタログ/パンフレットの店舗設置や配布、店頭・街頭イベント/体験会/店頭実演/セミナー/フェアなど
・マスメディア:テレビ/CM/雑誌/ラジオ
プロジェクトチーム、クライアントと一緒に作成するのがベストです。
一人で考えるとバイアスがかかりやすいのと一人で収集する情報には限界があります。
【情報の収集方法】
・ペルソナで得ている情報
・追加で定性・定量調査する(特にペルソナに定性的なインタビューなどするのがいい)
・有権者にヒアリングする
・顧客と密な担当者へのヒアリング
・ウェブで検索(口コミ・SNSなど)
・アンケート調査
・GAなどの分析ツール
上記の「チームで情報を出し合う」が完了したら、見やすい形に清書する。
私はAdobe XDを使うことが多いです。
実際の案件をお見せすることはできないので、下記は即席で作ったイメージになります。
細かい内容はダミーとして入れているだけなので、あくまで仕上がりのデザインイメージになります。
今回は「カスタマージャーニーマップの重要性と作り方について徹底解説」をお届けしました。
いかがでしたでしょうか。
CX、UX、オムニチャネル化などと密接に関わり、年々重要性が増しているカスタマージャーニーマップ。
最近は、どの企業もCX、UXの向上に力を入れている印象ですが、その際にもカスタマージャーニーマップが大きな力を発揮します。
この記事がカスタマージャーニーマップを作る際の手助けになればと思います。
では今回はこの辺で。
この記事を見ているあなたに
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