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実例から紐解くリアルなWebディレクターとは?

WebディレクターはWebサイトの構築・運用における顧客窓口として、また社内の現場監督的な立ち位置で、プロジェクトには欠かせない職種です。
今後のキャリアステップとして考えている方、他業種からの転職を考える人も多い仕事の1つです。
一方で、デザイナーやプログラマーと違って実際、どんな仕事をしているのか分からない方、具体的な仕事のイメージが描けない方も多いのではないでしょうか。
この記事ではWeb ディレクターとして7年近く働き、様々なサイトの構築・運用におけるディレクションを担当した著者が、以下についてご案内します。
・リアルなWebディレクターの業務内容、失敗談、ポイント等の解説(サイト構築プロジェクトを例にご紹介)
・タイプ別で見るWebディレクター紹介
・Webディレクター関連Q&A
本記事を読むことで、Webディレクターとして実際に働くイメージが湧きやすくなります。出来るだけ具体的にお伝えしていますので、Webディレクターの仕事に興味がある方は是非参考にしてください。
目次を参考に、興味のあるコンテンツからご覧頂くこともできます。

Webディレクターの仕事内容

ディレクターとは?

ディレクターという職種はWeb業界に限らずテレビやデザイン制作の現場でも存在しています。
テレビディレクター、クリエイティブディレクター、Webディレクター等、活躍する場所によって呼び方も異なりますが、共通するのは制作現場の監督的なポジションでプロジェクトを管理すること、そのためにスケジュール管理や予算管理などを行うマネジメント力や、関係者と調整を行うコミュニケーション力などが求められる点です。
※本記事では今後ディレクターと記載する際にはWebディレクターを指します。

Webディレクターの役割

Webディレクターの仕事は多岐に渡りますが、所属先が事業会社か、制作会社かによっても業務内容は異なります。本記事では制作会社におけるWebディレクターの役割を解説します。

プロジェクト管理:担当するプロジェクトを管理する側面からWebディレクターの仕事を見てみましょう。大きくスケジュール管理、予算管理、品質管理があります。

スケジュール管理:プロジェクトには必ずいつまでに完了するという納期があります。Webディレクターはこの納期までにWebサイト公開やデータ納品などを完了できるようにスケジュールを作成し、管理します。

予算(原価)管理:決められた予算内でプロジェクトが完了できるように、予算管理を行います。会社によって違いはありますが、Webディレクターは主に原価を管理します。Webサイトの構築、運用にかかる原価は主に人件費ですので、この人件費を軸に原価の管理を行います。

品質管理:洋服で言えば品質は洋服のデザインや、利用している生地、縫製の状態等を指すと思います。Webサイトにおける品質はデザイン、使いやすさ、管理方法などの製品としての品質と、制作過程における接客や説明などのサービスの品質が挙げられます。製品としての品質を保つために、様々なチェックシート等を活用しながら管理を行います。

要件定義、ヒアリング

Webサイトに関わる様々な要件を顧客とすり合わせ、要件定義書などのドキュメントに落とし込む工程を要件定義と呼んでいます。
この要件定義を行うに当たって、顧客にヒアリングしたり、何故それを決める必要があるか、どのように決めていくかなどの説明を行うのがWebディレクターの重要な業務の1つです。

顧客対応、社内への共有・発注

Webサイト構築中のデザインや設計資料、出来上がったサイトの顧客確認や、必要な素材の提供依頼など、プロジェクト内での顧客とのやり取りは、基本的にはWebディレクターが全て窓口になります。
また社内メンバーへの情報共有や作業指示をまとめて依頼するのもディレクターの仕事です。

Webディレクターの役割~プロジェクト開始からサイト公開後まで

Webディレクターが制作過程でどのようにプロジェクトに関わっているかを、サイト構築の流れに沿って見てみましょう。
サイト規模が50ページ前後、簡単な問い合わせシステムのある企業のコーポレートサイト構築を例に紹介しますね。

プロジェクトの概要ヒアリング

Webディレクターとしてプロジェクト担当にアサインされたら、まずは営業からプロジェクトの概要をヒアリングします(Web制作会社や案件によっては受注前の企画提案の段階からディレクターがプロジェクトに参加する場合もあります)。

ディレクター失敗談「営業のヒアリング内容だけを参考にしていた」

プロジェクトの手綱を握るディレクターが、プロジェクトの概要把握を営業からのヒアリング内容のみに依存していると、後で痛い目に会います。
営業が、見積りにも影響する機能面のすり合わせを顧客と出来ていなかったり、公開までのスケジュールが極端に短かったり、顧客の提示した条件が予算感と合っていなかったり。
これらは営業の不手際という意味ではなく、ディレクターが自分自身でも事前調査、顧客ヒアリングをするべきという意味で重要です。

ここがポイント!事前に対策を検討しよう

営業からのヒアリングの時点で、不明点や詳細を詰めるべき点をしっかり挙げだせておけば、事前に対策を打ったり、営業と予め顧客に交渉が必要そうな点などをすり合わせられます。
プロジェクトをたくさん経験すると、ヒアリングの時点で「このプロジェクトは危険そうだな。。」「顧客とこの部分は最初にしっかり確認しておこう」など、ディレクター自身でピンと来たりするようになります。

解説:案件ヒアリングとは

プロジェクトが始まる前の段階で、見積りに必要な範囲での大枠のWebサイト要件は営業が顧客と確認している場合が多いです。
この時点でプロジェクトの規模感や納期、顧客の体制、企画時の提案内容とそれに対する顧客のフィードバックなどを確認し、プロジェクト全体の大枠のイメージをWebディレクターが掴めるかが今後の進行で非常に重要です。
必要な情報が欠けている場合には、顧客とのキックオフミーティングや、営業の追加ヒアリングなどで補足します。

プロジェクトチーム編成

案件の規模、内容に併せてプロジェクトチームを編成します。

Webディレクターが行うこと

メンバーのアサイン方法はWeb制作会社によって異なりますが、設計・デザイン段階で関わるプランナーやデザイナー、案件によってはエンジニア(Webシステム担当)等は早めにプロジェクトに加わってもらい、概要を共有します。

解説:プロジェクトチーム編成とは

Webサイトの構築はキャンペーンページなどを除き、短いものでも1ヶ月、大規模プロジェクトになると6ヵ月〜1年かけてのプロジェクトになりますので、チームメンバーとは長く共に仕事をする仲間と言えます。個人的な感想ですが、大変なプロジェクトほど一緒に乗り越えたチームメンバーとは強い連帯感が生まれたり、その後のプロジェクト内外で情報共有したり助けあったりと、良い関係が築けることも多いと感じています。

要件定義

Webサイトのコンセプトや機能、納期や予算などの要望、条件を顧客とすり合わせ、要件定義書などのドキュメントに落とし込む作業を要件定義と呼んでいます。
ディレクターが顧客と顔合わせを行うのも要件定義フェーズが多いです。

Webディレクターが行うこと

Webディレクター自身が顧客に関する調査を行うことは重要です。事前のヒアリング内容、企画と併せて、このプロジェクトでは何が重要か、自分なりに考えを持ってから打ち合わせに望むことができれば、顧客に対しても自分の言葉で話ができますし、質問内容にも説得力が出ます。
何より、プロジェクトに当たって顧客のことを理解しようとしている姿勢を伝えることができます。
顧客の担当者から見れば、これからプロジェクトの窓口となるWebディレクターが、自社のことを全く理解していないのか、しっかり準備して打ち合わせに臨んでいるのかでは、安心感が違います。

ここがポイント!:要件定義前の調査で案件をリードしよう

要件定義の最初のフェーズで顧客からの信頼を獲得できると、その後のプロジェクトの進め方や説明、交渉が必要な場合など様々な場面で担当者と非常にスムーズにやり取りができます。
また同じことは社内のプロジェクトメンバーにも言えます。顧客との窓口となり、顧客の意図を代弁する立場にあるWebディレクターが、プロジェクトのことを一番理解していれば、安心して指示を聞くことができますね。

Webディレクターあるある「事前に調べていても空回り」

私自身の経験を振り返ると、実際のプロジェクトではそんなには上手くいかないことが多かったのも事実です。新人の段階では、知識や経験はどうしても不足しているので、頑張って調べたことが活かせないことも多々ありますし、顧客によっては指示通りに納期内にサイトを作ることが最重要、または窓口の担当者も指示を受けてとりあえず居るだけで内容は分かっていないなど、こちらの準備が空回りすることもよくありました。
それでも今後のプロジェクトを引っ張る上で、ディレクターが事前の準備をしてマイナスになることはありません。
他のプロジェクト等で忙しくて準備に時間が割けないという事態は多くありますが、できる限り時間を取って、要件定義前の準備を行うことは大事です。

解説:要件定義とは

事前の社内ヒアリングで確認した内容を改めて振り返りつつ、補足で確認すべき内容を中心に顧客とすり合わせていきます。要件定義は、実は顧客との打ち合わせを行う前の準備が一番重要です。理由は2つあります。1つはプロジェクトの全容を事前に把握して必要な要件を漏れなく確認するため、もう1つは顧客の窓口となる担当者の信頼を得るためです。
顧客の信頼を得るという点でにおいては、Webディレクター自身が、顧客の事業内容や、主力製品、競合、現状のWebサイトがある場合にはその課題点などを可能な限りしっかりと把握して、打ち合わせの段階では顧客と同じ目線で話せるようにしておくことが重要です。

サイト設計

Webサイトの骨組みとなるサイト構成や、必要な機能を考えるのがサイト設計です。

解説:サイト設計とは

要件定義で確認したサイトの目的・目標や課題を整理し、Webサイトに必要なコンテンツや機能を確認します。整理した情報を元にWebサイト全体の構成をサイトマップというツリー状のページ一覧にまとめます。
その後、主要ページを中心にワイヤーフレームを作成します。ワイヤーフレームはページ内に掲載する情報を配置して、大まかなレイアウト(配置)が分かるようにしたもので、ナビゲーション(ページの上部などにある別ページへのリンクボタンの集まり)の項目や、掲載要素の優先順位などを確認できるようにします。
今回の例のような小規模のサイト設計では、サイトマップや主要ワイヤーフレームはディレクターが作成することも多いです。中・大規模なサイト構築時にはプランナーなどの設計担当者に依頼することが多くなります。

Webディレクターが行うこと

ディレクターは、ユーザー(Webサイトの利用者)目線で使いやすい構成になっているか、必要な情報が漏れなく優先順位も考慮されて配置されているかなどをチェックします。サイトマップやワイヤーフレームはそれ自体を作ることが目的ではありません。
情報を整理して可視化し、プロジェクトメンバーで議論することが欠かせません。顧客が伝えたい情報、ユーザーに伝わりやすい設計を、ディレクターが頭においてメンバーに指示し、議論することでWebサイトに一貫性のあるサイト設計ができます。

ディレクター失敗談「サイト設計の手直しがデザイン段階で発覚」

また作成したサイトマップやワイヤーフレームは、顧客ともすり合わせを行い、問題がないかを確認します。多くの担当者は普段からこのような資料に見慣れていないため、資料だけを見せて確認してと言うだけでは何を確認すれば良いのか分からないことも多くあります。
とりあえず顧客OKをもらってデザインを作ったら、そこで初めて顧客のフィードバックがくるということも制作時には良くあります。そして修正内容がサイト設計に関するもので、デザイナーに負荷をかけてしまった!という失敗も。

ここがポイント!:顧客に合わせた確認方法を

顧客に確認を取るときには、資料で何を判断して欲しいのかを、ディレクターから顧客に明確に伝える必要があります。担当者によっては、イメージが付きやすいように補足の資料や参考サイトなどを見てもらいながら、資料の意図を理解してもらうことも必要です。
相手に合わせて伝え方を工夫することはどの職種でも必要ですが、ディレクターにとってはプロジェクトを円滑に進めるための1つのスキルとも言えるほど重要です。

デザイン作成

ワイヤーフレームやサイトマップで大枠の設計ができたら、デザインを作成します。

解説:Webサイトのデザインとは

Webサイトのデザインは見た目の印象だけでなく、機能としての使いやすさ(ユーザビリティ)、サイトを訪れる全ての人がWebサイトの機能や情報を不自由なく利用できるか(アクセシビリティ)を考えることが特徴です。
Webサイトは芸術品ではなく、利用者が触って、必要な情報を得る、問い合わせや商品購入などのアクションをすることが目的ですので、ユーザビリティ、アクセシビリティへの対応は非常に重要です。

Webディレクターが行うこと

デザインを作成するにあたって、主要ターゲットは誰か、どの層までをWebサイトの閲覧対象としてカバーするかなどを顧客とすり合わせしておきます。
BtoCの若年層向けのファッションサイトを作るときに、高齢者でも見やすい文字サイズまで考えるとデザインにも制限が出ます。ディレクターは、要件定義で確認したターゲット層に合わせて、デザイン上はどの範囲までこのあたりの対応を行うかを事前に顧客とすり合わせます。

ディレクター失敗談「伝言ゲームで泥沼」

デザインフェーズで、ディレクターに求められるのは顧客の求めるデザインイメージを的確に掴み、デザイナーに伝えることです。顧客によって希望する内容は様々ですが、最初は「このサイトみたいにしたい」「パッと目を引くデザインがいいよね」といった抽象的な希望をもらうことが多くあります。
それをそのままデザイナーに伝えても顧客の意図したデザインは出来ません。
出来上がったデザインを元に話を進めても、完成形のイメージがズレていると修正が続き、最後には何が良いデザインなのか分からない状態にも。

ここがポイント!参考サイトの意図まで確認しよう

希望の参考サイトがある場合には、どの部分を良いと思ったのか、担当者の意図を確認します。色味やコントラストか、レイアウトなのか、ボタンなどの操作性なのか、聞いてみると担当者の意図していることが分かりますし、実はデザインの参考サイトと言いながら、掲載コンテンツの内容に関心があっただけということもあります。
また、イメージが全くないから全部お任せ!という担当者もいます。例えば「ターゲット層が好むのはこういったデザインです」「御社のコーポレートカラーとの組み合わせではこのサイトの配色などもあります」といった参考サイトをこちらから提示しながら、イメージをすり合わせるのも1つの方法です。

ここがポイント(その2)!キーマンは誰だ!?

デザインを含め、最終的な意思決定者が、先方社内では誰なのかを出来る限り把握しておきます。
担当者と散々議論して修正しようやく決まったデザインが、上長のひと言で振り出しに戻ることもあります。
前もってキーマンを把握しておけば、デザイン決定など重要な場面だけでも打ち合わせに参加してもらい、その場で全員の合意をとるなどの対策が打てます。
この辺りの合意形成をどう取っていくかを判断することもディレクターの重要な業務です(そして筆者は何度も泣き目に会いました)。

システム設計

Webサイト構築と平行して進めるディレクターの仕事の中にはWeb開発に関わるものもあります。

システム設計って何をするの?

今回は簡単な問い合わせシステムを自社で開発する想定で考えてみましょう。簡易的なCMS、問い合わせシステムなどをWeb開発する際の設計は、基本設計(概要設計)と詳細設計に分かれます。

  • 基本設計:外部から見たシステムの動きを決めるために、必要な機能や項目を顧客とすり合わせるもの。確認した内容は、基本設計書などの資料に反映して残しておく。
  • 詳細設計:開発者(プログラマー)がプログラムの具体的な実装方法を設計

ディレクターが行うこと

顧客とシステムの仕様を確認するときにも、考え方の根本の部分はデザインと同じで、「顧客に設計資料を見て何を判断してもらう必要があるか」を正しく伝え、認識を合わせることです。

ここがポイント!INとOUTを明確に

基本的なWeb開発の流れを整理した後は「何をインプットして、何をアウトプットするか」を1つずつクリアにしていく作業になります。
Web開発、システムと言うと全く分からない!(デザインと同じですね)と拒否反応をする顧客担当者もいますので、分かりやすくかみ砕いて、ある程度任せてもらえそうな細かい仕様は、自社で設計するようにするなど、説明内容も切り分けて行うと比較的スムーズに進みます。

ディレクター失敗談「冷や汗かきました」

システム会社のWebサイト構築・開発を行う場合には、顧客の方がより専門的な立場から依頼をしたり、確認をしてくる場合もあります。
相手の方が明らかに知識面で詳しい場合もありますが、落ち着いて必要なことを確認し、分からない点は「自社の開発担当者と確認します」と伝えるなどして、その場で適当に答えないことも大事です。

用語解説:Web開発

業務系システムなどバックオフィス系のBtoBシステム、ECサイトやアプリ開発などのBtoCシステムなどの他、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の開発案件などもあります。
全てを自社で行うこともあれば、システム開発専門の会社と協力して構築する(Web制作会社で見た目のhtmlファイルをテンプレートとして作成してシステム会社がシステム実装)場合もあり、様々なケースがあります。

コーディング(HTML/CSSコーディング)

サイト設計、デザインともに顧客とすり合わせができたら、Webサイトのコンテンツ作成に入ります。Webサイトは通常はHTMLという形式のファイルで構築され、体裁をCSSという装飾用の記述をまとめたファイルで整えるため、この工程をHTML/CSSコーディング、またはコーディングと呼んでいます。

Webディレクターが行うこと

コーディングに関しては基本的にWebディレクターが手を動かして作業を行うことはありません。
作業者への依頼が無事に完了したら、スケジュール確認やコーディング後の確認等の準備、さらに公開やデータ納品に向けた段取りの確認を顧客と進めます。

ディレクター失敗談「あれ?このコンテンツの素材は?」

デザインが無事に確認完了しいざコーディング、という段階に来て、一部のコンテンツの原稿が全く手つかずの状態でそこだけ作業に取り掛かれない!という状態に。
目の前のタスクや先方との確認に追われている時でも、スケジュールを見ながら、先の工程を常に確認して、準備を進めるのもディレクターの仕事です。ただ、なぜか忙しい時ほど、重要なやるべきことが重なったりします。

ここがポイント!ディレクターは周りに依頼してナンボ

プロジェクトをリードしているディレクターに対して「これは進めている?」と指摘してくれる存在は基本的にはいません。
そのため、ディレクターは出来る限り、周りにお願いできる仕事は依頼して、自身はプロジェクト全体を俯瞰できるように、余力を保つ努力が必要です。
周りから見たら「ディレクターだけ楽してない?」と思われるかもしれませんがそれで良いのです。水面下(脳内)は常に別のことで大忙しですから。

校正、検品

出来上がったHTMLファイルをテスト環境等でチェックし、原稿と出来上がったページの内容に違いがないか確認するのが校正作業、リンクなどの動作確認、対応ブラウザでの表示確認など色々な点からWebサイトのチェックを行うのが検品作業です。

Webディレクターが行うこと

校正や検品作業で何をチェックするかを作業者に指示します。コーディング後にはWebサイトとして機能するところまで完成に近づいていますので、顧客側も本腰を入れて内容の確認を行うことが多いです。
ディレクターは顧客確認の際には、何を確認してほしいかを顧客に説明します。特にスケジュールが限られている場合などは、社内の校正が完全に終わっていない場合でも顧客確認を平行して行うこともあります。

ディレクター失敗談「The・先祖返り」

作業者にコーディングを依頼した後に、顧客から一部のコンテンツ原稿の差し替えを頼まれたディレクターA。新しい原稿を使って作業者に依頼し、正しくコンテンツが出来上がったにも拘わらず、社内の素材データを更新し忘れてしまったために、古い原稿をもとに校正を依頼。
わざわざ正しいコンテンツを古い情報に「修正」してから、顧客へ確認してしまいました。
顧客からの指摘はご想像の通りです。「あれ?後でAさんに送った原稿はなぜ反映されていないんですか??」…(コンテンツが誤りによって前の状態に戻ってしまうことを先祖返りと呼び、稀に社内でも悲鳴が上がる原因となっていました)。

ここがポイント!データは常に最新かつ1か所にまとめる!

素材管理、データ管理がしっかり出来ていないと、色々なトラブルの原因になります。上述のように最新データの更新漏れだけでなく、ディレクターのPC内だけで最新データを管理していた(通常は社内サーバで最新データをメンバー共有します)、共有フォルダ内が整理されていないために正しいデータがどれか分からなくなった等、データ関連のトラブルは常に起こり得ます。
机の上とサーバ内は常に整理整頓。どの業界においても基本でありながら、非常に重要です。
コーディングも終わると、Webサイトの全体がいよいよ出来上がってきます。ページ間のリンクもつながるとサイトが出来上がってきたことが実感できるはずです。ディレクターはここからが、公開に向けて忙しくなります。

公開

いよいよサイトの公開です。顧客の最終OKをもらってから、テスト環境で検品作業と合わせ最終チェックを行い、公開に備えます。

Webディレクターが行うこと

Webサイトは公開を行った瞬間から、世界中のどこからでも、誰でも見られるようになります。公開前の確認は勿論ですが、公開日時、公開直後のサイトのチェック体制(社内、顧客ともに)、問題が発生した場合の対処方法などを公開手順書などのドキュメントを使って事前に顧客含めて擦り合わせし、何かあった場合でも落ち着いて対応できるようにします。
公開直後はまずサイトが正しく表示されるか、いくつかのコンテンツで動作は正しく行われているかなどを速やかに確認します。システムが実装されている場合には、実際に利用者が行う作業をテストし、フロントエンドだけでなくバックエンド側での動作検証も行います。

ディレクター失敗談「システムが動かない…」

テスト環境では問題なく動いていた問い合わせフォームが、本番環境に移した途端に機能しない事態に。テスト環境と本番環境でサーバー仕様が異なっているため、フォームの一部の機能が正常に動作しない事態が発生。
一旦問い合わせフォームへのリンクを外し、該当のシステムを改修しテスト→顧客確認→復旧を急ぎ行いました。

ここがポイント!想定外の事態こそ落ち着いて報連相

どんなに準備をしていても、想定外が起こることはあります。公開時など、パニックになりそうなシーンですが、まずは現状確認と関係者・上長等への報連相を忘れないようにしましょう。一人で抱えこまず「解決のために何が必要か」を第一に考え、迅速に行動します。
意外にも周りに相談するとあっさり解決できたり、上長や営業からのフォローで事なきを得ることは良くあります。またその時の反省点・対策をしっかりプロジェクト内で検討することで、貴重な経験として次に活かせます。

公開後

Webサイト公開後は、分析ツール等も活用しながら、要件定義時に顧客と確認した目標の達成状況を確認、検証します。また公開直後からWebサイトは構築→運用に切り替わります。
サイト運用・更新を顧客が行う場合には定期的なフォローを、制作会社が行う場合には運用プロジェクトとして、ディレクションを行います。

タイプ別Webディレクター紹介

Webディレクターのプロジェクトの進め方は、人によって様々です。ここでは、Webディレクターに求められる代表的な3つのビジネススキルを軸に、タイプ別ディレクターの特長をご紹介します。
※私自身が接してきたWebディレクターの方も、これらに該当するケースが多いと感じています。

  • リーダー型:リーダーシップ
  • 繋ぎ型:コミュニケーション力
  • 論理型:ロジカルシンキング

リーダー型ディレクター

文字通り、プロジェクトチームのリーダーとして、チームを引っ張るディレクションを行うタイプです。

リーダー型ディレクターの特長

・自分がやりたいことに周りを巻き込める人
・チームの先頭に立つことが得意(好き)な人
・決断力、実行力がある人

強み

・この人に任せておける、頼れると思わせられれば、プロジェクトが非常にスムーズに進む
・指示系統が統率されやすく、スピード感のある対応が取りやすい ・プロジェクトの規模・メンバーに拘わらずパフォーマンスを発揮しやすい

こんな問題があることも

・決断、相談依頼が止まらず、関係者から頼られ過ぎて負荷がかかるケース
・誤った決断であっても周囲に指摘されずにプロジェクトが暴走するケース
・知識、経験面が不十分だと、強引なリードが不信感を持たれ、孤立するケース

繋ぎ型ディレクター

プロジェクトメンバー間、顧客との間に入って信頼関係を築き、プロジェクト進行を円滑にする「潤滑油」的な立場からディレクションを行うタイプです。

繋ぎ型ディレクターの特長

・相手の立場に沿ったコミュニケーションができる人
・皆で盛り上がるのが好き、モノ・コトありきでなく、人ありきのスタンス
・老若男女問わず安心感を与えられる人

強み

・メンバーの個性を尊重しつつ相談もできるため、個々のパフォーマンスを高く保てる
・年次に拘わらずメンバー間に入って膿を出し、チーム力を高められる
・顧客との関係も適度に保つことができ、トラブルを未然に防いだり、沈静化できる

こんな問題があることも

・リーダーとしての存在感が薄れ、プロジェクト推進力が下がるケース
・ディレクターの年次が低い場合等、指示が通りづらく業務を押し付けられるケース
・外部業者と距離を取るスタンスの顧客には、繋ぎ型の強みが活かしづらい

論理型ディレクター

論理的に筋道を立てて、コミュニケーションを図る論理型は、常に一定のチームパフォーマンスを積み上げることができます。

論理型ディレクターの特長

・普段から物事を計画を立てて実行、検証するのが好きな人
・状況に左右されず、落ち着いて考えて行動できる人

強み

・プロジェクトの種類に拘わらず、着実に成果を出すことができる
・関係者に説得力のある説明、指示が行える。
・QCDのバランスに優れ、成果物の品質をコントロールしやすい

こんな問題があることも

・理詰めでメンバーを圧迫してしまい、関係性が悪くなるケース
・合理性を優先しすぎて、顧客要望(夢)を先回りして潰してしまうケース

1つだけに特化したディレクターはいない

3つのタイプを例に挙げましたが、どれか1つだけに特化しているディレクターはほぼいません。理由は2つあります。
・リーダー型のリーダーシップ、繋ぎ型のコミュニケーション力、論理型のロジカルシンキング(論理的思考)のどの能力もWebディレクターには求められる
・プロジェクト内でのディレクターのポジションによって、自身のスタンスを調整することも往々にしてある(経験の浅いメンバーが集まったチーム内では繋ぎ型もリーダー型に寄った形になりますし、社内ではリーダー型のスタンスを取りつつ、高圧的な顧客に対しては繋ぎ型を演じる論理型ディレクターもいました)

ここがポイント!自分の特性を知ろう

これらのヒューマンスキルは、Webディレクターとして活動する中で必要なスキルとして蓄積されていくものの、個人のこれまでの人生経験や特性によって、得手不得手は必ずあります。
自分はどのタイプかなと考えてみると、自社内でも参考になる人が見つけやすくなる=ロールモデルとして学ぶことができるのでお勧めです。

能力・スキルで見るWebディレクタータイプ

能力・スキル面から見るWebディレクターの分類もあります。ディレクターのキャリアステップにも繋がるもので、一通りのディレクションが出来るようになった後に、担当する案件や自身の興味の幅などでタイプが広がっていくイメージです。各々のタイプ詳細については割愛しますが、特性と同様、複数のスキルを取得する事も多いので、システムにも強い営業タイプディレクターなど、様々な選択肢があります。
・プロデューサータイプ
・営業タイプ
・システムタイプ
・クリエイティブタイプ

Webディレクター関連Q&A

【Q】Webディレクターに年齢は関係ありますか?

A:関係はあります(求められる経験やスキルが変わります)
Web業界は他と比べて年齢に対する制限が少ない業界と言えますが、手に職のあるWebデザイナー、プログラマーなどに比べると、Webディレクターに求められるものは年代によって変わってくるのが実情ではないでしょうか。
20代はこれからディレクターとしての経験値を踏むことで、伸びしろが期待できれば、経験・知識はこれからでも歓迎する制作会社なども増えそうです。
30代になるとデザインやシステムに強い/実績がある等、技術力の評価基準がある程度見せられる+ディレクターの素養に関連する経験があると有利です。
また、他業界であってもプロジェクトマネジメントを経験してきた場合には、Web業界の知識のキャッチアップは必須ですが、これまでの経験をWebディレクターにも活かせると考えられます。
40代になると、企業内で求められる役割も、最前線で他の社員をリードできる経験・スキルを持っているプロフェッショナルか、チームを牽引できる人材マネジメント力が欠かせなくなりそうです。

【Q】未経験からWebディレクターになるために必須のスキルは何ですか?

A:明確な必須スキルはありません(技術的な面よりビジネススキルが求められます)。
プログラマーは関連する言語でソースコードを記述できることが求められますし、関連する技術を証明する資格もあります。デザイナーもデジタルツールを使えることは必要ですし、ポートフォリオなど、自身の実績を明示する指標があります。そのような点で見るとWebディレクターの場合には明確な技術の下地は求められません。
一方で、相手に分かりやすく伝える力、プロジェクトマネジメント力、段取り力、粘り強さ、調整力、交渉力、精神的なタフさなどのソフトスキルが求められます。これらはWeb業界が未経験でも(20代の場合には新卒の場合であっても)過去の経験から鍛えられているケースはあります。
例えば、段取り力・タスク管理力が非常に優れた先輩ディレクターに、どうやってそんなに管理できるんですか?と聞いた時には「ファミレスだよ」と意外な答えをもらいました。学生時代にファミレスのキッチンで大量のオーダーを捌く中で、優先順位付け、全体の進捗を見ながらの調理ペース配分、他のキッチンスタッフとの連携や指示出しなど、Webディレクターに必要な段取り力の下地は鍛えられたと教えられたのを良く覚えています。
少し極端な例ですが、自身の経験を棚卸しするときに、視点を変えればWebディレクターで活かせる経験もあるかもしれません。

【Q】Webディレクター未経験から独り立ちできるまでの成長イメージを教えてください。

A:あくまで一例ですが、以下のような流れが私の所属していた制作会社ではありました。
1.OJTとして先輩ディレクターのサポート(資料作成、打ち合わせ準備など)
2.アシスタントディレクター(社内発注などのディレクション、運用案件の顧客窓口)
3.小規模サイト構築プロジェクトの主担当
4.中規模以上サイト構築案件の主担当
5.特殊案件の担当(クレーム案件火消し、短納期、システム等、特殊な顧客の案件等)

人によってはいきなりクレーム案件やシステム開発案件に加わるといったこともあるかもしれません。あくまで上記は一例です。個人的な感想としては、3の小規模サイト構築の主担当を初めて行った時が一番、ディレクターとしての経験値を積むことができたと感じました。同時に一番しんどい時期でもありました。
制作会社によって経験のスピードは様々だと思いますが、自社では4にいくまでに1~2年、3年目が終わる頃には一通りの案件は経験させてもらって、ある程度のプロジェクトの進め方は分かったような気がしています。実際に案件を正しく理解し、しっかりとしたプロジェクトマネジメントを意識して行えるようになるまでにはもっと時間が必要だと個人的には感じています。

まとめ:3年で取り合えずプロジェクトを回すことはできそうだが、本当のマネジメントはまだまだ時間が必要。

【Q】今後のキャリアに活かせるWebディレクターのスキルは何ですか。

A:ソフトスキルが活かせます。特にWebディレクター時代に苦労した所が後に活きてきます。
・プロジェクトマネジメント力
・調整力、段取り力、課題解決力(切り抜け力)、精神的なタフさ(図太さ)、交渉力、説明力
・精神的にどっしりする
・ITツール、情報収集力
例えばインサイドセールス職に未経験で転職した際には、営業としてのヒアリング力(ニーズや課題の引き出し方)はディレクターのそれとは異なり、一から学ぶ形でしたが、顧客への説明に関しては「そこだけ異常に上手い」と上長からコメントをもらいました。
データ分析の担当として勤務した経歴もありますが、社内関係者との調整や、要件の確認など、ディレクターとしての経験は応用が効くなと感じた場面も多くありました。顧客プレゼン等である程度の度胸がついたことも、発表などでは役に立ったなと思っています。よくよく考えてみると、上記のことは全てディレクター時代には、思うように出来ず苦労していた内容でした。

まとめ

Webディレクターは知識や技術もさることながら、人対人のコミュニケーションを通じて、プロジェクトを進めていく泥臭い仕事です。だからこそ、他の仕事では得られない達成感を感じられたり、今後のキャリアにも活かせる一生もののスキル/経験値が得られる仕事でもあります。
本記事が、リアルなWebディレクターのお仕事状況をイメージし、キャリアを考える手助けになれば幸いです。

この記事の著者

LW BLOG編集部

ライターチーム

ITに関する知見を発信するナレッジ記事やLANWAYのカルチャー、社員の働き方を発信する採用記事など、様々な独自情報をお届けします。

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